次の日からは最悪だった。
いつも騒いでいた女子が減っていたので、
俺が好きな子がいることで 冷めてくれたのかと思った。
深瀬に俺の思いはバレてしまったかもしれないけど、うるさい外野が減って、良かったとさえ思った。
しかしそんな甘いことではなかった。
そいつらは、深瀬のクラスに行っていた。
入れ替わり立ち替わり、深瀬を見定めに行っていたのだ。
篤人がそれを見て 俺に謝ってくれたが、
謝らなければいけないのは
俺が深瀬に だ。
しかし事情を説明すると、カッコ悪い告白になってしまう。
俺には、告白する心構えなんてできていない。
この期に及んでも だ。
自称ファンクラブの女子達も人数が多く、
本当に俺を好きなやつがどれくらいいるのかよくわからなかった。
今思えば、とりあえず群れてみたいだけだったのかもしれない。
深瀬に事情を話すことも
深瀬に告白することも
女子達の行動をやめさすことも
何もできないまま時間だけがたった。
重たい気持ちを引きずったまま、もうすぐ夏休み。
俺は自責の念から、深瀬に関わるのをやめた。
俺が好きな態度をとらなければ、
深瀬への嫌がらせはなくなるはずだ。
好きな気持ちは変わらない。
いつも彼女しか見えない。
でも俺が見つめると、深瀬を追い詰める。
深瀬に非はまるでないのに。
苦渋の決断だった。
深瀬を心の奥へ追いやるために、サッカーと勉強に打ち込んだ。
勉強していれば、どこかで深瀬とつながれる気がした。
深瀬と話せない3年は長かった。
俺もよく告白されたが、深瀬の噂もよく耳にした。
イベントがある度 誰かがフラれていた。
その度に内心、ほっとしていた。
クラスメイトで、バスケ部一番人気のイケメン黒崎がコクった時は、フラレたことにクラス中大騒ぎだった。
「深瀬って誰か好きな人いんのかなー?」
黒崎が、相当へこんだ様子で、なぜか俺に聞いてきた。
そんなの、俺も知りたい。
「いや‥‥知らないけど。」
「でも氷上、深瀬と同じ小学校だろ?なんか知らないの?」
「小学校は同じだけど、中学なって全然しゃべってないし。」
「そういや氷上も彼女つくんないよね?めっちゃ告白されてんのに。誰か好きなやついんの?」
一瞬、黒崎から目を反らした。
そんなの答えられるわけない。
いる。って言いたいけど、また深瀬に迷惑をかけてしまう。
深瀬に猛アピールしていた黒崎が、フラレたっていうのに、俺が告白したって、全然ムリだろうけど。
「いや、今はサッカー一筋かな。」
嘘をついたことに、少し胸が痛んだ。
「なんか似てるよな。」
「何が?」
「氷上と深瀬。」
「どこが?」
「超モテるのに、本心がわからない。誰かを好きなのか、そうでないのかもわからない。好きな人もいないのに、あんなに告白されて、全部断るって、あり得るの?おれにはわからん。」
「黒崎もモテるじゃん?」
「俺はずっと深瀬が好きだから、他は断るだろ。」
「あぁ。そっか。」
俺の方がずっと好きなのに‥‥胸を張って言えない自分がイヤになった。
「好きな人もいないのに、なんで試してみようとも思わないんだ?実は他にこっそり彼氏とかいんのか?」
「あぁ。それはあり得るね。」
言いながら胸が痛んだ。
「氷上、お前もそうか?実は他校に彼女いんのか?」
「いない。本当にいない。俺は本当にサッカーが忙しい。」
「そっか。深瀬も恋愛より勉強なのかなぁ。」
「かなー。」
「同じ高校には行けないしなー。もうあきらめるしかないのかなー。」
ドキリとした。俺と同じ。
同じ高校には行けない。どんなに頑張っても、トップ校には届かない。もうあきらめるしかないのか。
「やっぱり彼氏いんのかなー。」
黒崎がうなだれた。
あまりに皆、断られるので、深瀬は、あることないこと噂されていた。
許嫁がいる とか
大学生の彼氏がいる とか
俺の名前はもう聞かなかったから、俺と深瀬を結び付けるやつはいなくなったんだろう。
同時に、深瀬の中から俺の存在も消えてしまったかもしれない。
深瀬に忘れられるなんて嫌だ。
俺の中はずっと深瀬でいっぱいなのに。
学校で偶然すれ違う度、心臓が跳ね上がる。
わざと見ないようにするけれど、
どうしても俺の存在に気づいて欲しくて、
いつも少しはしゃいだ。
俺のこと覚えてる?
俺の声を聞いて思い出して。
俺の方を見て。
深瀬の顔が見たい。
深瀬の声が聞きたい。
深瀬の視界に入りたい。
いつもそう願っていた。
だから卒業式を前に、
最後の悪あがきをすることを決めた。
できれば告白。
無理でも連絡先だけは渡したい。
この暗黒の中学を抜け出せる日なら、
深瀬を好きだと言ってもいいんじゃないか。
ようやく遅い一歩を踏み出した。
いつも騒いでいた女子が減っていたので、
俺が好きな子がいることで 冷めてくれたのかと思った。
深瀬に俺の思いはバレてしまったかもしれないけど、うるさい外野が減って、良かったとさえ思った。
しかしそんな甘いことではなかった。
そいつらは、深瀬のクラスに行っていた。
入れ替わり立ち替わり、深瀬を見定めに行っていたのだ。
篤人がそれを見て 俺に謝ってくれたが、
謝らなければいけないのは
俺が深瀬に だ。
しかし事情を説明すると、カッコ悪い告白になってしまう。
俺には、告白する心構えなんてできていない。
この期に及んでも だ。
自称ファンクラブの女子達も人数が多く、
本当に俺を好きなやつがどれくらいいるのかよくわからなかった。
今思えば、とりあえず群れてみたいだけだったのかもしれない。
深瀬に事情を話すことも
深瀬に告白することも
女子達の行動をやめさすことも
何もできないまま時間だけがたった。
重たい気持ちを引きずったまま、もうすぐ夏休み。
俺は自責の念から、深瀬に関わるのをやめた。
俺が好きな態度をとらなければ、
深瀬への嫌がらせはなくなるはずだ。
好きな気持ちは変わらない。
いつも彼女しか見えない。
でも俺が見つめると、深瀬を追い詰める。
深瀬に非はまるでないのに。
苦渋の決断だった。
深瀬を心の奥へ追いやるために、サッカーと勉強に打ち込んだ。
勉強していれば、どこかで深瀬とつながれる気がした。
深瀬と話せない3年は長かった。
俺もよく告白されたが、深瀬の噂もよく耳にした。
イベントがある度 誰かがフラれていた。
その度に内心、ほっとしていた。
クラスメイトで、バスケ部一番人気のイケメン黒崎がコクった時は、フラレたことにクラス中大騒ぎだった。
「深瀬って誰か好きな人いんのかなー?」
黒崎が、相当へこんだ様子で、なぜか俺に聞いてきた。
そんなの、俺も知りたい。
「いや‥‥知らないけど。」
「でも氷上、深瀬と同じ小学校だろ?なんか知らないの?」
「小学校は同じだけど、中学なって全然しゃべってないし。」
「そういや氷上も彼女つくんないよね?めっちゃ告白されてんのに。誰か好きなやついんの?」
一瞬、黒崎から目を反らした。
そんなの答えられるわけない。
いる。って言いたいけど、また深瀬に迷惑をかけてしまう。
深瀬に猛アピールしていた黒崎が、フラレたっていうのに、俺が告白したって、全然ムリだろうけど。
「いや、今はサッカー一筋かな。」
嘘をついたことに、少し胸が痛んだ。
「なんか似てるよな。」
「何が?」
「氷上と深瀬。」
「どこが?」
「超モテるのに、本心がわからない。誰かを好きなのか、そうでないのかもわからない。好きな人もいないのに、あんなに告白されて、全部断るって、あり得るの?おれにはわからん。」
「黒崎もモテるじゃん?」
「俺はずっと深瀬が好きだから、他は断るだろ。」
「あぁ。そっか。」
俺の方がずっと好きなのに‥‥胸を張って言えない自分がイヤになった。
「好きな人もいないのに、なんで試してみようとも思わないんだ?実は他にこっそり彼氏とかいんのか?」
「あぁ。それはあり得るね。」
言いながら胸が痛んだ。
「氷上、お前もそうか?実は他校に彼女いんのか?」
「いない。本当にいない。俺は本当にサッカーが忙しい。」
「そっか。深瀬も恋愛より勉強なのかなぁ。」
「かなー。」
「同じ高校には行けないしなー。もうあきらめるしかないのかなー。」
ドキリとした。俺と同じ。
同じ高校には行けない。どんなに頑張っても、トップ校には届かない。もうあきらめるしかないのか。
「やっぱり彼氏いんのかなー。」
黒崎がうなだれた。
あまりに皆、断られるので、深瀬は、あることないこと噂されていた。
許嫁がいる とか
大学生の彼氏がいる とか
俺の名前はもう聞かなかったから、俺と深瀬を結び付けるやつはいなくなったんだろう。
同時に、深瀬の中から俺の存在も消えてしまったかもしれない。
深瀬に忘れられるなんて嫌だ。
俺の中はずっと深瀬でいっぱいなのに。
学校で偶然すれ違う度、心臓が跳ね上がる。
わざと見ないようにするけれど、
どうしても俺の存在に気づいて欲しくて、
いつも少しはしゃいだ。
俺のこと覚えてる?
俺の声を聞いて思い出して。
俺の方を見て。
深瀬の顔が見たい。
深瀬の声が聞きたい。
深瀬の視界に入りたい。
いつもそう願っていた。
だから卒業式を前に、
最後の悪あがきをすることを決めた。
できれば告白。
無理でも連絡先だけは渡したい。
この暗黒の中学を抜け出せる日なら、
深瀬を好きだと言ってもいいんじゃないか。
ようやく遅い一歩を踏み出した。