中学に入ると、クラス数が倍以上になった。

当然深瀬と同じクラスではなかった。

俺は放課後、中学の部活ではなく、クラブチームに通っていたので、深瀬に全く会えなかった。

そして、急にモテ始めた。

もともと高めだった背が更に伸びたせいなのか。

入学したての頃は、休み時間ごとに出入口に数人女子が固まってチラチラこちらを見ているだけだった。

日毎 その人数は増え、俺の嫌いなタイプの女子達が

「氷上くーん」

と名前を呼んだ。

振り向くと、

「きゃぁぁぁ。」

とカン高い歓声をあげた。

初めは何かの嫌がらせかと思ったが、

友達の篤人が、アレは俺のファンクラブらしい

と教えてくれた。

にわかに信じがたかったが、最初は悪い気はしなかった。

こんなにモテるなら、深瀬に告白してもいけるんじゃないか

とさえ思い始めていた。

思い上がりだ。

俺は女の怖さを知らなかった。


ことの発端は、篤人が女子に呼び出されたことだった。

「告白なんじゃないの?やるな~篤人~。」

なんて、はしゃいで送り出した。

篤人もまんざらでもなさそうだった。



しかし、しばらくして帰ってきた篤人は、明かに元気がない。

「何だった?」

恐る恐る聞いてみた。


「『氷上の好きな人教えて下さい。』って言われたよ。
直接涼に聞けないからって、わざわざオレを 呼び出すなよな。」

篤人から少しの怒りを感じた。

「なんかごめん…で、どうしたの?」

「すごくしつこいから、
『小学生の時は深瀬が好きだったけど、今は知らない。』
っていっといた。」

血の気が引いた。

いくら馬鹿な俺でもわかる。

これはヤバイ。

かといって篤人を責めても情況は変わらない。

調子に乗った罰が与えられた。