急接近したのは、林間学校の肝だめしだった。

うちの小学校では、林間学校の二日目に男女ペアで手をつないでまわる肝だめしがあった。

このペアはくじ引きで決められる。

なんとか深瀬とペアになりたい俺は、若干 不正を働いた。

女子から順番にくじを引いたので、

友達とふざけるふりをして深瀬の番号を盗み見た。

11番

男子が引き始めると、引いた奴等に近づいて番号を見た。

運命的に11番を引ければ良かったが、引いたのは友達の篤人だった。

俺はすぐ篤人に番号の紙を交換して欲しいと頼んだ。

ラッキーナンバーなんだ。とか俺の背番号だし。とか
場当たり的なウソをついて。

俺の理不尽なお願いに、篤人はしぶしぶ交換してくれた。微妙な顔をしていたが。

俺の心は舞い上がっていた。

が、なるべく平静を装って、

「11番深瀬なんだ。よろしくな。」

と当選くじをヒラヒサさせながら言った。

「氷上がペア?よろしくね。」

嫌そうな顔はしていない。

笑っている。

良かった。手をつなげるのは俺だ!

俄然、林間学校が楽しみになった。


しかし、代償はあった。

その後の休み時間、篤人がニヤニヤしてちかづいてきた。

「涼さ、深瀬とペアになりたくて番号交換したかったんじゃないの?深瀬が好きなの?」

篤人とは友達だし、サッカークラブも一緒だ。

信頼できるやつだし、騙した後ろめたさもあって、
白状した。

「おぉ。でも内緒にしといて。」

秘密にしとけば良かったのに。

今では後悔している。

深瀬本人に伝える前に人に話してはいけなかった。

子供すぎた俺は何もわかっていなかった。

ただ深瀬が好きなだけだった。