お互いにきっちり制服を着て、おかしなところがないかチェックした。

ほどけた私の髪に、涼が優しく触れる。

「俺‥‥結莉のことばっかり考えて危ないかも。結莉は誰のものでもないのに、誰にも渡したくなくなる。」

見上げると、涼のきれいな瞳に目を奪われた。

「私は‥‥私なんかが彼女でいいのかなって、いっつも思ってる。
涼は太陽みたいな人なのに、私が独り占めしていいのかな…って。」

「太陽って…結莉 過大評価だよ。」

「そんなことない。涼は皆に好かれるもの。 涼に出会ったら皆、涼のこと好きになるもの。」

「結莉…それはないよ。それを言うなら結莉の方が…」

涼が私をフォローしてくれようとしたので、思わず言葉を遮った。

「私は、小さいころから 人に嫌われることが多かったから、涼みたいな人は奇跡に思えるよ。
涼のまわりには、人がいっぱい集まる。
だからいつも、涼が、私のこと好きって言ってくれることが、夢みたいに思える…。」

初めて、本心を話した。

自分が他人から嫌われやすいこと、口に出したのははじめてだった。

こんなこと言うと、私の方こそ 幻滅されちゃうな。
すると、涼は、

「結莉は、綺麗だし、性格も優しいし、賢いし、完璧だから、好きって伝えるのに勇気がいるんだよ。俺だって、5年もかかったし。嫌われてるわけじゃないよ。女子からは嫉妬だよ。」

涼は、優しい。
こういうところが、太陽なんだよな。
いつもあたたかさをもらう。

「そんな風に思ってくれるの、涼だけだよ。伊織君だって、私のことなんて全然好きじゃないよ。今日会ってよくわかった。」

「どういうこと?」

涼の表情が少し曇る。

「うーん。私を好きっていう気持ちより、涼への対抗心とか、他人へのアピールが大きい気がした。」

「なんでそう思ったの?」

「会話によく、氷上が困るとか、氷上は関係ないとか、涼の名前が出てくるんだよね。
あと、伊織君と会う時、いっつもまわりに人がいる時なの。
本当に私が好きだったら、二人きりで話したいと思わない?
違うかなぁ。」

「俺には十分本気にみえるけど…」

「本気になってるように見せてるだけ…みたいに感じる。
自分だって、ひとりの彼女に決められるし、それを涼から奪えたら面白い…
くらいに思えるんだよね。」

「俺、あいつに何かしたかなぁ…。
あっ!でも、これ嫉妬で嫌われるってことじゃない?
結莉と一緒だよ。な?」

涼が、急にうれしそうに言うから、
なんだか私まで可笑しくなって、ふたりで笑った。