伊織くんの来襲を、涼にメールで報告したら、すぐ電話がかかってきた。

私が話始める前に、

「何か言われた?何かされなかった?」

と、焦り気味の涼がかわいくて、

「何にもないよ。
また、からかいに来ただけだよ。」

そう言ったのに、

「何て言ってからかってた?」

と、急に涼に声のトーンが低くなった。

「女友達と遊ぶのやめる…とか言ってた…けど、伊織くんに出来るわけないよね!」

明るく言ってみたのに、涼の声のトーンは、変わらない。

「それから?」

「友達いなくなったら、私と付き合って…
って言われた。そんなの無理だし、女友達とのつきあい止めないで…って言ったんだけど…」

「けど?」

「スマホ出して、連絡先全部消してしまって…」

「それで?」

「伊織くんのママも、私のママも私も呆然となって…帰った。」

「長瀬、親の前で言ったの?」

「知らなかったの!伊織くんが今日来ること。来たらいきなり皆の前で、おかしなこと言い出して…。でも本気じゃないと思うよ?」

「なんでわかるの?」

「だって…伊織くんはたくさん彼女いるし…」

「やめるって言ってるんでしょ?」

「でも、伊織くんは私のこと、好きじゃないと思う。面白がってるだけだよ。」

「本気だったらどうするの?」

「どうもしないよ。私は涼が好きだし。」

そう言うと、涼は少し黙って、

「ありがとう。なんか、問い詰めてごめん。
余裕ないよな。俺。
学校でも気を付けて見とくわ。
長瀬のこと。あと、何かあったら、絶対に電話してきて。」

「うん。わかった。」

涼が、余裕ない なんて、
そんなこと絶対なさそうなのに。

意外な言葉にキュンとなった。

伊織くんのことを心配してくれるのも、うれしかった。

私は、伊織くんのこと、真剣に考えていなかった。

どうせ、本気じゃないし、数日たったら、私のことなどまた忘れて、他の子達と楽しく遊んでいるだろうと。