「ゅーず!」
誰…だ…ろ?
「ほら!ゅず!起きなッ!」
「……………ん…?
梨子…?」
「やぁっと起きた!!」
机で居眠りをしているウチを呆れながら起こしたのは 親友の櫻井梨子[サクライリコ]だった。


「もぉッッッッ!
ゅずったら全然起ないんだから!!穂が読んでるよ!?」 「穂?」
「おーい!ゅずー!」
ウチの名前を恥ずかしいくらい大声で教室のドアから叫んだのは 保育園の頃からの腐れ縁の 倉橋穂[クラハシミノル]だ。

「もぉーなに?」
寝起きのため多少機嫌が悪い。穂が満面の笑顔で立っているドアへ渋々向かう。 「どーしたの」
「何で怒ってるのぉ?(泣)俺何かしたぁーッ?!(泣)」
「怒ってない。とっとと用件言いなさいよ」
冷たいなぁといじけながら穂は口を開いた。
「ゅずの好きな"曇りのち愛"の新しいの図書室に入ったからゅずに知らせに来たんだよぅ(泣)」
「!!そうゆうコトなら早く言えっつの!!まだ借りられてない?!」
「ごめんなさい…(泣)
でもでも!もちろん!ゅずのためにとってあるよ♪」
<曇りのち愛> とは高校生の男女2人のラブストーリーだ。去年の冬に初めてその本を読んで一気にはまってしまった。今は5巻まで出ていて、今回新しく図書室に入ってきたのはその5巻だ。穂は図書委員なのでそんな情報はすぐにゥチにまわる。
「放課後開いてるから来いよ!!」
「あったり前!!絶対行く!!」
待ってると言い残して、穂は自分の教室に戻っていった。
紹介遅れました。
夏樹ゆず[ナツキユズ]です!
桜華高校の3年生!
成績は…聞かないで!!
委員会は文化祭の委員長やってます!図書委員に入らなかったのは そこまで本が好きなわけではないからだ。
「にしても、穂ったらァンタにベタ惚れだね〜」
からかい口調は梨子のいつものことだ。
「気のせい。」
「ァンタも答えてあげればいいのに」
「うっさい!!ゥチは好きぢゃないの!!」
ふーんと鼻で答えられた
ゆずの顔は膨れた。
「梨子はいないの?好きな人とかさ」
今まであまり梨子の好きな人は聞いたことがない。