その一家は、私の怒鳴り声を聞いて
逃げるように走って帰った。

その声を聞きつけた真結子先生が
走って教室に入ってきた。

『海美ちゃん!どうしたの?
理事長から後で話を聞いておくわね。
さ、時間よ。始めましょう。』

対して柔軟もできないまま時間になってしまった。

それでも、体は十分に柔らかくなり
準備は万全だった。

『さぁ、始めましょう。』
真結子先生がそう告げると同時に
見学の人たちは一斉に拍手をした。

バーレッスンは、
プリエ、タンデュ、ジュッテ、ロンデジャンプ、
フォンデュ、
アンレール、フラッペ、グランバットマン、ジャンプ
を順に行う。
一つ終える度に、歓声が起こる。
うるさい。とても。

その後、
ロンデジャンプ、フォンデュ、アンレールを一つにまとめたものを行い
タンデュとジュッテは二回づつ。
次はセンターレッスンで、バーを使わずに鏡を正面にして
バーと同じようにタンデュやプリエを組み合わせた動きをするアダージョ。
早いアレグロの音楽に合わせてタンデュやジャンプをしたり、
ワルツに合わせてステップを踏んだり、アラベスクやグランジュッテをしたりする。

そして、ピルエットやシェネという回転系の振りもセンターレッスンで行う。

すべて1通り終わると、
大会の練習に入った。

大体の振りは完成しているので
真結子先生に、一通り1度踊るように言われた。

先程のレッスンの時とは打って変わり、
教室内は静まり返っていた。

始まりの姿勢で曲がかかるのを待った。

いつも通り、いつも通り踊った。

自分の意識していたところは完ぺきだったし
足も160度位後ろで上がって、鏡で見えた姿もバッチリだった。
ターンも綺麗に回れ、我ながら
今のシーズンにここまで出来ればマシだな。という感じだった。

真結子先生にも、
『今の時点でここまで出来れば大分いいんじゃない?』
と、お褒めの言葉をいただいた。

嬉しくて、レッスンの始まる前の事なんて忘れて
12:30までみっちりとレッスンをした。