彼の名前を呼ぶために唇を開くと、
「――湊さん…」

その名前を呼んだ。

「――桃葉…」

私の名前を呼んだ藤岡さんの顔が近づいてきた。

彼を受け入れるために、私は目を閉じた。

「――ッ…」

私の唇に藤岡さんの唇が触れた。

そっと、まるで大切なものを扱うかのように唇が離れたその瞬間、
「――桃葉…」

藤岡さんが私を抱きしめてきた。

全てを受け入れるように、彼の広い背中に自分の両手を回した。

「あなたが好きです。

あなたをもう泣かせません。

あなたを一生愛し続けます」

耳元でささやくように言った藤岡さんに、
「――私もあなたのことを愛し続けます」

私は言い返すと、ギュッとその背中を強く抱きしめた。