「ですけど、目が覚めた時にはあなたはもういませんでした」

そう言った藤岡さんに、私は小さくなることしかできなかった。

「逃げたんですね?」

そう聞いてきた藤岡さんに、
「はい、逃げました」

私は正直に答えることしかできなかった。

だって目が覚めたら見知らぬ部屋の見知らぬベッドのうえにいたら、逃げることしか考えられないでしょう…。

と言うか、怖かったんですもの…。

「正直でいいですよ」

褒めてるのか皮肉を言われてるのか…。

それに対して、私は何も返すことができなかった。

「逃げられたことはショックでした。

好きになったから、もう1度だけ会いたいと願いました。

そしたら、跡を継ぐことになった職場にあなたがいたんです」

藤岡さんが私を見つめてきた。