「な、泣き顔って…もしかして、泣き顔フェチって言うヤツなんですか?」

そう聞いた私に、
「いいえ、そう言った類のものではございません。

京極桃葉さん、あなたそのものに僕はひかれたんです」

藤岡さんが丁寧に答えた。

「そ、そうですか…」

泣き顔にひかれたとかって言うから、そうなのかと信じてしまいそうになった。

「あなたの泣いている目が驚いたように僕を見つめたその瞬間、僕はあなたにキスをしていました」

藤岡さんが言い終わったのと同時に、私は指に自分の唇を当てた。

あの時、彼に突然キスされても抵抗しなかったのは以前に1度だけキスをされたことがあったからだったんだ。

キスをされたのに嫌悪感を感じなかった理由も理解した。