「何となく入ったその店はバーで、カウンターの席に視線を向けると、泣きながらお酒を飲んでいる1人の女性がいました。

僕は彼女の隣の席に腰を下ろして、どうして泣いているんですかと聞きました。

それに対して彼女は、泣きながら僕の質問に答えてくれました。

“長い間つきあっていた婚約者に浮気されて、浮気相手との間に子供ができたことを理由に婚約破棄された”、と」

そこまで話し終えた藤岡さんは、私を見つめた。

「その女性が私だった、と言うことですか?」

そう言った私に、
「ええ、そうです。

あなたは泣きながら、婚約破棄された悔しさと浮気されたつらさをぶつけていました」

藤岡さんが言い返した。