「イテテ…」

痛そうにひねられた手をさする和明は涙目だった。

そんな和明の顔を藤岡さんは覗き込むと、
「約束は必ず守ってくださいね。

今度桃葉さんの前に現れたり、桃葉さんに変なことをしたら、あなたをストーカーとして警察に通報するのはもちろんのこと、あなたの会社にも実家にも連絡させていただきますから」

先ほどと同じ、ドスの効いた低い声で言った。

「わかったわかった、約束は必ず守るから！」

和明はペコペコと躰を２つ折りにして謝ると、逃げるように店から立ち去った。

彼の後ろ姿を見送っていたら、
「大丈夫ですか？」

藤岡さんが声をかけてきた。

私にかけてきたその声は、先ほどまでのドスの効いたものではなかった。

いつもの彼の、そこに気づかいがプラスされた優しい声だった。

「あ、はい…」

そう返事をした私に、
「ケガはありませんでしたか？」

続けて聞いてきた藤岡さんに、私は首を縦に振ってうなずいた。