「イデデデデデ…ッ！」

私に向かって伸びてきたその手を藤岡さんがつかんだかと思ったら、あっと言う間に和明の背中に回ってつかんだ手をひねりあげた。

あまりの素早い動作に、私は絶句することしかできなかった。

「自分の身勝手で相手を裏切った以上、その信頼は一生戻らないと言うことを覚えておいた方がいいですよ。

あなたみたいな自分勝手な人間に桃葉さんは絶対に渡しません」

ドスの効いた低い声で藤岡さんが和明に言った。

「今日のところは見逃してあげますが、もう２度と桃葉さんの前に現れないと約束しなさい」

「わ、わかったわかった！

もう現れないから！

現れないから離してくれ！

約束するから手を離してくれ！」

苦しそうに叫びながら和明が返事したことを確認すると、ひねった手を離した。