「彼女をつかんでいるその手を離しなさい」

そう言った藤岡さんに、和明はパッと私の腕をつかんでいた手を離した。

気のせいだろうか?

彼の躰から、ただならぬ殺気を感じた。

カツン、カツン…と革靴を鳴らしながら、藤岡さんが私と和明の間に入った。

「浮気相手とうまく行かなくなって別れたから、彼女のところに戻ってきて復縁を迫っていると言うところでしょうか?」

藤岡さんが和明に言った。

「そ、そうなんだよ…。

だから店長さん、あんたからも桃葉に言ってやってくれないか?

もう絶対に浮気はしないから、俺ともう1度やり直して欲しいって…」

「都合がよ過ぎるんじゃないですか?」

和明の話をさえぎるように藤岡さんが言った。