眼鏡越しの瞳が私を見つめている。

まるで全てを見透かしてしまいそうなその瞳に、私は目をそらすようにうつむいた。

「目を見てください」

そんなことを言われてしまったら、目をあわすしか他がない。

逃げることはもちろんのこと、目をそらすこともできなくなってしまった。

追いつめられたとは、まさにこのことを言うんだと思った。

もう訳がわからないよ…。

「僕を覚えていない、と言うことですか?」

訳がわからなくて戸惑っていたら、形のいい唇が動いて音を発した。

「お、覚えていないも何も…」

あなたと会ったこと自体が今日が初めてだと言うのに…。

それ以前に私はどこで藤岡さんと会ったと言うのだろうか?

眼鏡越しの瞳に対して、私は答えることができない。