近過ぎるその距離に私は逃げるように後ろへと下がった。

「逃げないでください」

藤岡さんがそう言ったのと同時に、ドンと私の躰が壁にぶつかった。

逃げたくても逃げられない状況になってしまった。

「僕のことを思い出しましたか?」

藤岡さんのその質問に、
「お、思い出すも何も…」

私は呟くように答えて首を横に振った。

本当に、どこであなたと会ったって言うの?

誰かと間違えているって言う訳じゃないよね?

もしそうだとしたら、いろいろな意味でどうすればいいんだと言う話なんだけど…。

そもそも、何でこうなっているの?

何でこんなことになっているんだっけ?

後ろは壁、目の前には端正な顔をしている藤岡さんがいた。