下校をしらせるチャイムの音が鳴り響く廊下
そしてオレはその廊下をもうダッシュで走っていた
すれ違った先生の怒鳴った声が聞こえたが、気にせずに階段をかけ降りる
…オレは今から…あの人に思いを伝えに行くんだ…
階段を降りると忍者のように息を殺して玄関の方をのぞきみる
玄関には上靴からローファーに履き替えている髪の長い女の子がいた
おっとりした様子で上靴を下駄箱にしまい、ゆっくりと外に繋がる扉に向かって歩き出そうとしている
その瞳はどこかぼーっとしている
彼女のいる下駄箱の前に行くと、彼女の下駄箱の名前を確認した
『2年4組 神田 優美子』
(…よし、間違いない)
顔をあげ、前を見つめた
視線の先には黒髪をなびかせながらゆっくりと歩く彼女
すうっと息を吸い、オレは覚悟を決めた
「…神田さん!!!」
静かな玄関に響いたオレの声に神田さんはすぐに気づき、後ろを振り向いた
神田さんの長い黒髪がフワッと宙を舞う
キラキラと夕焼けを反射していて、まるで天使の羽のようだ
そして、その羽は宙を絡まることなく再び彼女の背中に舞い降りた
『…き…はら…くん?…どうしたの?』
オレの存在に驚きつつ、彼女は優しい笑顔を向けてくれた
笑顔にドキリとしながら、オレは人生の勝負に出た
「神田さん、好きです!オレと付き合ってください!!」
『……は?生理的に無理』