”心優へ

貴女への手紙がこんな形になってごめんなさい。
お母さんなんていうのもおこがましいかしら…
まぁそんなことはいいわ。
私ね、病気になっちゃって余命宣告されたの。
最後に会いに行こうと思ったけど、どの面下げていけばいいのかもわからなくて……バチが当たったのね…”




読み進めて行くと、なんだか腹が立って行く。
他人も同然の母親なのに、御涙頂戴の展開に流されそうな自分が。一度読むのをやめて深呼吸して心を落ち着けた。




よし……続き。



”今回この遺書を書いたのは、貴女に私の財産を受け取ってほしいから。そして…これを渡しに来た5人の男の子をねトップアイドルに育ててほしいの。”




「は?」


思わず声が出た。
え、死んでなお何言ってんの?この人




”お金はね、私パトロンがいてその人の財産ぜーんぶ引き継いだからあるのよ。その子たちに必ずトップアイドルに育てるって約束したから、死んだ後のことが心配で…
その時思い出したの。あ、心優がいるわって。”



いやどこで思い出してくれてんだ。
このクソババア



思わず普段は抑え込んでる口の悪い部分が心の中でも全面的に出てしまう。全くもって意味がわからない。



”心優なら多分その5人も立派に育て上げられるとおもうわ!だって貴女は私の娘だもの!!ということでよろぴこ!事務所も持ち物だから、好きに使ってね!!


私の出来なかった夢をやりとげて!!お母さん……お空から見守ってるからね!てへぺろ”





グシャと遺書を握りしめた。



「あんのっクソ女っっっ!!!」


思わず目の前にイケメンがいることを忘れて机を揺らす。




なにが出来なかった私の夢をやりとげて!だ。
いままで娘に、なに1つしてくれないくせに
一丁前にこんなこと押し付けて……

そして最初におこがましいとか思ってた気持ち終盤でどこ行った!!!?私の娘なんだからできるわ!じゃねぇよ!!!



「悪いけど…お断りいたします……」

ぴしゃりと言い放つと5人は目を見開いた。



右から……とても色気を放出してる男、筋肉質の元気そうな男、女の子みたいなしなやかな男、最後は双子なのか顔が同じ男の子たち。


確かに個性はありそうだけど、私がこの人たちを育てる理由はなに1つない!!




「相続権は放棄いたしますので、良ければお金は使っていただいて結構です。それでは」



「……待て。心優」



はぁ?


なんとも馴れ馴れしく呼ばれたことで眉を歪めて、振り向くとダンッと壁ドンが来た。




再びはぁ!!?



「頼む……俺達はまだ…由乃さんになんの恩返しもしてない……」


「いやちょ、ち、近い!!」


甘い香りと甘い顔と甘い声。
まさにフェロモン男子といってもおかしくない彼に、私の心臓はドキドキと音を立てていく。




……か、彼氏の晃(あきら)がいるのに!!



「……な。必ず俺達はトップを取る……だから手伝ってくれ」



「あ、う、あ…」


なんなのこの男の人っっっっ!!!!!
目があっただけで妊娠しそうっ!!!