何か理由があるのかな……と私も言葉を選ぶ。
凛太朗くんは、黙々とご飯を食べてお昼と同じように綺麗に平らげた。


「……話を変えるんだけどね、凛太朗くんはどうしてアイドルになりたいの?」


私の言葉に彼は悩むと


「……なにか目標がないと生きてる意味がわからないし、慎太郎が由乃さんに声かけられてやるって言ったから」


と割と明確な答えが返ってくる。



成る程。
慎太郎くんは、事務所で確か言ってたよね。
声優さんに会いたいからとか、どうしようもない理由。



「…私も生きてる意味がわかんない時あったなぁ……」


「え、みゆちゃんにもあったの?」


「うん。みんなあるんじゃない?? そういう時期」


「……そうかな…」


「まぁあくまで一部かもしれないけど。」



親はあんなだし、一応反抗期はあった。
おばあちゃんに迷惑をかけた時期だってなかったといえば嘘になる。


”私って生きてる意味あるのかな…”


そう呟いたあの日のこと、私は今も忘れない。



「……生きてる意味なんて生きてりゃ見つかるんだよ」



そしておばあちゃんが、笑いながら言った言葉も。



「……なにそれ」

「おばあちゃんの言葉だよ。私に言ってくれたの。人はみんな生きてるうちに生きてる意味を見つけるんだよって。10年ちょっとしか生きてないくせにもう諦めんじゃないよって怒られたの。」


「………」


「……私はいま、お母さんを見返してやるためにあんた達をアイドルに育てるのも生きてる意味だと思ってるし、将来結婚して子供ができて幸せな家庭を築くまで死ねないと思ってるから。」



ジッと私の顔を見つめた彼にニコリと笑顔を作る



「……死にたいって思うたび私が手を差し出してあげる。凛太朗くんの笑顔は、絶対可愛い系男子が好きな女子に受けるよ!一緒に頑張ろう!!」



こんなことでメンヘラの心に響くとは思っていないが

私は自分が熱い女だというのは割と自覚していた。


文化祭の時も、体育祭の時もどちらかと言うとクラスが勝つために熱くなるタイプだ。




「………見つけた……」


「え?」


「僕の生きる意味……見つけた」

だからまさかこの熱さがこう役に立つとは思ってもみなかった。



凛太朗くんの最上級の笑顔に、私の心臓が跳ねたのは一瞬のこと。いつもうつむいて暗い顔をしているけれど、これは最高の武器だ。




「…………アイドルになって……やりたいこと見つけたよ」


「ほ、ほんと!?なら事務所にもちゃんとこれる?死ぬ方法探さない?」

「うん。大丈夫……」



一体なにを見つけたんだろうとは思ったけど、もうそんなことはいい。いまはこうして彼の心を動かせたことにすこぶる感動している。



更生成功ってことで…オッケーなのかな…これは