キッチンを借りて、ここに来る前に買った材料で鮭の雑炊を作る。私が料理をしている姿を凛太朗くんは、ご機嫌そうに見ていた。


……絶対体調悪いの嘘だ。


なんて思ったけど、もう何も言うもんか。


「…お腹すいた……」

「はいはい。分かりました。」


マネージャーというよりもう既に母親気分


ため息まじりに鍋を火にかけるとヘッドフォンをした慎太郎くんが部屋から出てきた。



「……わっ…何やってんの?心優ちゃん」


「…慎太郎……みゆちゃん僕のご飯作ってくれてるの」


「え、嘘。僕もいまアニメぶっ通しでみてポテチしか食べてないからお腹すいた。」



「はぁ?なんなの…君たち双子は」



まさに宝の持ち腐れ。
こんなに可愛い顔してるのに、生活習慣からなってない。



「……っていうか、凛太朗がご飯食べるなんて珍しいね。死にたい日は終わったの?」



「……いまは別に。」


「ああなるほど。精神安定剤見つけたからか。」



双子のよくわからない会話に、ん?なんて思いながらも私は手を動かす。精神安定剤なんて飲んでるの……いや必要かもしれないけど。



「…ほらできたよ。慎太郎くんも座って」


「やったね!!」


目の前に雑炊を出すと、同じ顔して嬉しそうに笑った2人



「熱いからね。気をつけて」


「「はーい」」


シンクロした。さすが双子。なんて感心して、料理で散らかしたものを片付ける。


やっぱりどうしても目がいっちゃうけど、凛太朗くんの手首に巻かれてる包帯は見栄えが悪い。



「……ねぇねぇ。凛太朗くん」


「…なに?」


「これから仕事とかするに当たって包帯取らない?」


笑顔で優しく言い聞かそうとしてみたけれど、彼は真顔になった後、なにも言わずに雑炊をフーフーと冷まし始めた。



「…心優ちゃん。それ無理。その包帯、もはや凛太朗の一部だから。僕のゲームと同じ」


「……うん。それはいいけど何してんの?」


「え……」


右手で雑炊を食べるためのスプーンを持ちながら、左手でスマホゲームをいじる慎太郎くんを、鋭い目つきで睨みつける。



信じられない。
行儀悪すぎ



「貸して」


「あ、あ、いま協力プレイ」


「……このままシンクに投げ込むわよ…」


「…………」



またしても青ざめてスマホを隠した慎太郎くんをみて、よしよし。と微笑んだ。




それにしても身体の一部……どういうことだよ。
何か安心するものがあるのかな……



ゆっくり食べる凛太朗くんとは打って変わって慎太郎くん早く食べるのに必死。


そんなにゲームがしたいの?と思った通り

綺麗に平らげるとスマホをすぐに手に持って


逃げるように部屋に戻った。




…………双子でどう転がったらここまでダメな方向にいくのか聞きたい。



慎太郎くんがいなくなったのでまたリビングに2人きり




「…ねぇ…包帯ないと不安?」


私のいきなりの質問に凛太朗くんはゆっくりと頷いた。