見事にペロリとうどんを平らげた凛太朗くんは、
「…美味しかった…」
とお箸を置いた。
「なら良かった。」
「……また作って欲しい……明日も明後日も明々後日も」
「…ん。出来る限りは作るよ。事務所にキッチンあったし、食べなきゃ貧血で倒れそうだもんね。君は」
「ミートスパゲティ食べたい……」
「わかった。約束ね」
ニコリと笑いかければ彼の顔に少し笑みが溢れる。その顔はなんだか可愛くて、胸をくすぐるものがあった。
今はネガティブなタレントとか、不思議系、ダーク系もいるからいけるかもしれない。笑顔が素敵なのは売りだ。
「……包帯巻くの忘れてた」
しかし…
「……あ……」
手首の痛々しい傷は流石にパンチが強すぎる…。
「…痛そう…っっ!!こんなことしたら痛いでしょ?!」
「……別に……血を見たら安心するから…」
「…いやそれはダメでしょ…ほら手を出して」
やめさせたら傷は消えるだろうけど……にしてもだ。
こういうのをすぐにやめさせるのはやはり難しそう。
依存みたいな感じらしいし。
「っていうかまだ血が出てる……やったばかり? 消毒しなくちゃ」
「え……それは困る」
「え、どうして?」
「…消えちゃう……力作なのに……」
ん?消えちゃう?
「…消毒しただけで、傷は消えないけど……」
「…………」
私の言葉に黙り込んだ凛太朗くんは、ふっと目を逸らした
何かがおかしい
「……ねぇ…それ本物の傷??」
こんなことを聞いていいのかわからなかったけど、疑問に思ってしまったので素直にそう聞いてみる。
すると彼は、ゆっくりと左右に首を振った。
「ボールペンで描いた……」
「はぁ!?」
え、流行りの傷メイクとかそっち系のやつ!?
いやそれにしてもリアルすぎて、信じられない。
ってどこで才能発揮させてるんだっ!こいつは!!!
「ちょっと…ケチャップといい何してるの!? リスカはしてないってこと?! 血を見ると安心するって意味深なこと言ったくせに!」
「……僕痛いの嫌い」
「いや、今そんなこと聞いてないからっ!!!」
「……血も本物はやだ……」
「な、な、な、心配したのに!!!いや、やってないほうがいいんだけどっ!!!」
「……みゆちゃん…すぐ怒る…怖い……」
ホッとすべきなのか怒るべきなのかもうわからない。
「……もう!! 色々誤解を生むから消すよ!!」
「やだ……っ」
この後消す消さないで、30分は揉めた。