「ふぅん、なるほどね。だいたいは分かったよ。要するに、好きだけど、接点がないからどうしようもないってわけね。まぁでもそんなのは
いい訳に聞こえるけどね。」

話し終えた私にかけた第一声が、それだった。

「ちょうちょさん、辛辣すぎる・・・。私、本気なんだよ?」

「あのさぁ、その、ちょうちょさんっていうのやめない?あなた、名前は?」

今更な気がしたが、私は答える。

「・・・つきか。葉桜月影、です。」
「月影?いい名前じゃない。」

私は、少し暗い名前な気がするけどな。

「ちょうちょさんの名前は?」
「あたし?あたしは名前なんてないよ。月影、あなたが何でもいいから、あたしの名前、つけてよ。」

名前がない?しかも、名前をつけてほしいだなんて・・・。ペットじゃないんだから。

「ん〜、じゃあ、『アゲハ』なんてどう?ちょうちょさん、アゲハ蝶みたいだし。」

てっきり、そのまますぎて却下されるのかと思ったら、彼女はあっさりうなづいた。

「うん、いいんじゃない。センスいいね。」

そして、人だったら普通は手を差し出すところを、彼女はぱたぱたと羽を揺らして、軽く会釈らしきものをした。
そして、満足気にこう言った。

「よろしく、月影。あたしは今日から『アゲハ』だ!」