好きだから。
本気で好きだからこそ言えない。

なのに、彼はそんなことは気にしていないみたいだ。私がいつまでも、うだうだ悩んでいる間に、ひょいひょいとハードルを飛び越え、私を追い越して行く。

なにこんなことで悩んでんの?
悩む暇あるなら、やってみればいいじゃん。

そんなふうに。

颯爽とハードルを飛び越えて行く彼を見つめながら、ぼうっとしている私。

もう、やめちゃおうかな。
このまま動かない方が楽だから。
何かすると傷付くのなら、何もしないほうがいいんじゃないの?
傷付くのが怖いから。
何も、したくない。


そんなとき、前から足音がした。迷いのない、真っ直ぐにこちらに向かってくる足音が。
顔を上げると、そこにはさっき去って行った彼の姿がある。

どうして?
私のことなんて置いて、行ってしまったんじゃないの?

驚く私をよそに、彼は私の手を取って走り出す。さっき彼が走ったコースを。

大丈夫だよ。
ひとりが怖いのなら、ふたりで進めばいいでしょ?

そう、伝えるように。