久しぶりの学校に着いた。

下駄箱に靴をしまっていると、聞き覚えのある声が私の鼓膜を振動させた。

「あれ、月影?おはよ!風邪治ったん?」

女子みたいな、赤いチェックのマフラーに顔を埋めている愛希だった。

「おはよぉ。 ん〜。まだ、ちょっと本調子じゃないかなぁ。」

それは本当で、平熱に戻ったものの、まだ体は重く、頭も痛かった。

「えーっ!大丈夫かよ?そんなら、今日も休めばよかったのに。」

「そんなに休みたくないんだもん。授業にも置いてかれちゃうし。それに、もうすぐテストもあるしさ。」

「あーね。真面目やなぁー。」

少しサイズがゆるくて、歩くたびに、かぷかぷ音が鳴る上履きを履いて、ふたり歩く。

「もう、ほんとにのん気すぎ!愛希にうつしてやるぅ!」

そう言って、付けていたマスクを外して、彼に頬を寄せてみる。

「うわっ!やめろ〜!俺は風邪のひかないことだけが唯一の自慢なんだ!」

「それしか自慢することないもんねぇ。」

「酷〜!そんなことねぇよ!」

そう言って、エナメルを私の腕にぶつけてくる。対抗しているつもりなのかもしれないが、全く痛くない。

ほら。
愛希は優しすぎるんだよ。