「話の流れで聞けば、恥ずかしくないわよ。ほら、勇気出して!」

「・・・・・・無理。」

毛布を頭からかぶった。

「どうしてよ?聞きたいんじゃないの?」

「・・・・・・恐い。」

毛布を頭からかぶったまま私はそう言った。我ながら、弱々しい声だった。
驚いて、言葉を失っているアゲハの様子が、毛布の中でも、手に取るように分かった。

そうなのだ。
私は所詮、恋に不器用で、何にもできない、ただの憶病者なのだ。
もういっそ消えてしまいたい。

「・・・何言ってるの。月影、好きな人聞くって、いいことしかないわよ?」

アゲハが、急に明るい声を出した。

「だって、いないって言ったら、月影が立候補出来るわけだし、いるって言ったら、それはもう月影のことかもしれないし。
好きな人いるなら、それは誰なのかよりも、どうして好きになったのかとか聞けば、それが結弦君のタイプってことになって、好きな女の子のタイプが聞かなくても分かっちゃうじゃない?」

ぺらぺらと話し出した彼女に驚き、思わず毛布から顔を出してしまった。
すると、愉快そうに羽を揺らすアゲハが、そこにいた。

「月影、分かった?物は考えようなのよ。」

アゲハが人だったら、きっと今、ドヤ顔をしていただろう。でも、言っていることは正しいので、何も言い返せない。

「・・・うん。そうかも、ね。」