「直接言えないことって?」

「そうねぇ。『好きな人いるの?』とかじゃない?聞いたことあるの?」

どきりとした。
結弦君の好きな人・・・。そう言えば、ずっと気になってはいた。知りたいという思いはあったが、聞く勇気は出せないままだった。

「・・・そんなこと聞けないよ・・・。」

「何、弱気になってんのよ。知りたいんじゃないの?せっかく、LINEが出来るようになったんだから、聞いちゃいなさいよ。」

もし、彼に好きな人を聞いたら。

いるよ、と答えるかもしれない。そうしたら私はきっと、誰なの?と返すだろう。

いないよ、と答えるかもしれない。そうしたら私はきっと、どうして?と返すだろう。

いないよ、と言われるのはまだいいとして、いるよ、と言われたら、私はもう立ち直れないかもしれない。ヒントを教えて、と言って、どんどん私から遠ざかっていったら。

もう、嫌だ。

彼の好きな人なんて知りたくない。