そう思うと、こうやって温かい部屋で毛布にくるまっている自分が、ひどくちっぽけに感じる。このまま消えてしまっても、誰も気が付かないのではないかと、思い始めてしまう。

もし私が消えてしまったら、今ここにある、彼を想う気持ちも消えてしまうのだろうか。

全てがなかったことになったら、寂しい気もするが、切なさも恋しさもなくなるなら、楽でいいなとも思う。

彼は、私が消えてしまったら、どう思うのだろう。

「何、ポエマーみたいなこと言ってんのよ。」

突然聞こえた声に、驚いて辺りを見渡すと、ベッドの横にある窓から、アゲハ蝶がはためいているのが見えた。
ロックを解いて、窓を開けてあげる。
すると、嬉しそうにすぐさま中に入ってきた。

「あ〜、寒かった〜。今日は特に寒いわね。・・・それより、どうしたの?風邪でもひいたの?」

「うん・・・。ちょっと熱っぽいかな。」

「たしかに顔が赤いね。何、夜ふかしでもしたの?」

アゲハは、何かを察したのか、にやにやした笑みを浮かべて尋ねてきた。

「昨日、結弦君とLINEしたよ。けっこう話が続いて、夜遅くまでやってたかな。でも、昨日は、朝から熱っぽかったんだ。」

「おっ!LINEしたの?やったじゃない!それで、そんなに夜遅くまで、どんな話したの?」

「ドラマの話。」

「え〜。それだけ?もっとないの?トキめくような話!」

体がだるくて、いつものアゲハの声が今日はやけに耳を痛めた。頭痛さえしてくる。

「・・・ごめん。ちょっと横になっていいかな。」

「ああ、ごめんね。じゃあ、寝ながら聞いてよ。」

私が横になったのを見ると、アゲハは先ほどよりも穏やかな口調で話し出した。

「よかったじゃない。結弦君と話できて。片想いから、一歩前進したんじゃない?」

「うん。だといいけど。」

「少しずつ前に進んできてるわよ。あとは、もっとLINEでおしゃべりすることね。LINEなら、面と向かって言えないことでも、言えるでしょう?もちろん、真剣な想いを伝えるときは、直接伝えた方がいいけどね。」

アゲハは、まるでそんな経験をしてきたような口調で、そう言った。