翌朝。
冷たい空気の漂う教室で、定期テストの課題を進めていると、ふぁあとあくびをしながら、眠そうな女の子が私の席に来た。

「月影ぁ〜。英語の予習やった?やってたら見して〜。」

「きーちゃん、おはよ〜。やってあるよ!」

「おお、さすが月影〜!」

私の親友であるきーちゃんは、いつも宿題を忘れがちだ。
机の中から英語のノートを取り出し、彼女に渡す。そして、すぐに立ち去ってしまいそうな彼女に、こう切り出した。

「・・・ね、きーちゃん。あのね・・・。」

やっぱり、誰かにこのことを話したくてたまらない。アゲハは、今日は見当たらなかった。
彼女は、重たそうなまぶたを見開いて、私の顔を見た。

「えっ、何、どした?まさか、片想いが進展したとか!?」

さっそく、図星なことを言われる。さすが、勘が鋭い。でも、あれは進展なのだろうか。

「う〜ん。進展したかは分かんないけど。その・・・、好きな人のLINEをね、追加したらね、返信が返って来たの!」

「・・・へ?何それ。そんだけかい!てか、追加してなかったの?」

「・・・うん。」

やれやれ、そこからかい、みたいな表情で呆れる彼女を見て、少し哀しくなる。でも、彼女は正しい。あまり話したこともなくて、LINEも追加していないのに好きだなんて、やはり一般的におかしいのだ。

その事実を突きつけられて、私は涙がこみ上げてきてしまった。

私は、彼にふさわしくないのだ・・・。