その日の帰り道、私は歩きながら考えた。どうしたら結弦君に近付くことが出来るのかと。それは私の日課だった。そのあと、必ず答えがでないということも。

「あーあ。どうして私のする恋は、いつも叶わないんだろう・・・。」

勢いに任せて蹴った石ころが、緑のフェンスに当たって跳ね返る。もう!と叫ぼうとしたとき、どこからか声が聞こえた。

「そんなんじゃ、いつまでたっても片想いのままだよ。」

我がままな妹をあやす姉のような、あったかいけどどこか鋭い声だった。

「いつも、ただみつめてるだけでさ。自分から動かないと、何にも変わんないよ?」

図星なことをずばずばと言われ、私はあたりを見渡して叫んだ。

「誰?・・・ですか?」

あたりには誰もいない。ただ、見覚えのあるちょうちょが、ふわふわと飛んでいるだけだ。

「誰って、ここにはあたししかいないでしょ。」

え?
まさか、そんな、嘘でしょ?

「ちょうちょさんが・・・しゃべってるの?」

「だから、あたししかいないでしょ!」