「アーゲーハー!!」

翌朝。早めに家を出て、いつもの芝生に飛び込むように駆けつけた。
すると、淡い桃色の小さな花のまわりを、ぱたぱたとはためく彼女がいた。

「あれっ、月影?どうしたん、今日は早いのね?」

「そんなことより、どうしよう!」

「何、世界でも終わるの?」

「・・・もう終わったよ・・・。結弦君から返事が来ないの!」

ほう、とばかりにアゲハが顔を上げる。

「まぁ、まだ1日でしょ?たまたま、昨日は携帯を開かなかったのかもしれないわよ。そんなに落ち込むことないよ。気長に待ちな!」

からりと、太陽のように笑う彼女。
そんなふうに、なんでもないふうに笑うことなんて出来ない。

今日だって、結弦君に会うのが気まずくて、布団から出るのが嫌だった。いつも朝、LINEが来ているかどうかスマホを確認するのだが、今日は何も来ていないことは分かっていたので、何も見なかった。

彼からの返信がないと言う事実を、飲み込みたくなかった。

「・・・やっぱりさ、結弦君は私のことが嫌いなんだよ。だから、返事が来ないんだよ。」

「なぁ〜に、ネガティブなこと言ってんの!あのね、『好き』の反対は『嫌い』じゃないのよ。知ってた?」

「・・・、え?何?」

「好きの反対は、『無関心』。つまり、関心がないと言うことよ。もし、月影の予想が正しくても、無関心より、嫌われてる方がいいんじゃない?」

「・・・それって、励ましてるの?けなしてるの?」

「励ましてるに決まってるじゃない。」

アゲハはそう言って、得意げに羽を揺らした。