「LINEしなよ〜。LINEなら、恥ずかしくないんじゃない?」

実は彼は、クラスのグループに入っているので、追加しようと思えば追加出来るのだ。だが、追加する勇気も、トークする勇気も出ないままだった。

「・・・急にLINEして、変に思われないかな?」

「思われないでしょ。なんなら、機種変更したとか、言えばいいんじゃない?」

それもそうだなと思う。クラスメイトなんだし、それに、去年も同じクラスだし。同じ班だったこともあるのだから、LINEしたっておかしくないはずだ。

「・・・ずっと返事が来なかったら、どうしよう?」

「まず、やってみてから言いなさいよ。まったく、月影は心配性すぎるわ。」

アゲハが、やれやれと言わんばかりに溜め息をつく。そのとき、廊下から、ガヤガヤと人の気配がした。

「じゃ、またね。・・・結弦君、来たんじゃない?頑張ってね。おはようって、言うんでしょう?」

ぱたぱたと淡い紫色の羽をはためかせ、窓から出て行こうとしている。
私よりも、おそらく年上の彼女だ。きっと、たくさんの恋をし、たくさんの恋を失ったのだろう。その分、恋に対する考えは正しいはずだ。

彼とLINEが出来るようになれば、おはようも言えるようになるだろうか。友達の関係に戻れるだろうか。そうなれば、それに越したことはないのだが・・・。

「おは〜、月影〜。どーしたん、ぽけーっとして?」

はっとすると、きーちゃんがきょとん顔で立っていた。気付くと、アゲハも既にいなくなっている。

「もしや〜。好きな奴のこと考えてたのか!?朝からあついねぇ〜!ひゅー!」

「いやいや、考えてないからっ!」

・・・まぁ、考えてたけどね。
そのことは、きーちゃんには内緒です。