暖かい春風の吹く、しんと静かな教室で、カーテンがふわりと揺れる。
テストの終わった私は、席が窓ぎわなのをいいことに、ぼんやりと空を眺めていた。

その時、ざわっとあたりがどよめいた。ん?と思って教室を見ると、何かが飛んでいた。

ちょうちょだ。

黒がベースで、羽の先端は淡い紫色。私の手のひら二つぶんくらいの大きいちょうちょだ。アゲハ蝶というのかもしれない。

お調子者の男子が、こっち来んなーといって騒いでいる。まだテスト中の子なんておかまいな
しだ。
ちょうちょは、結弦君の周りをもぱたぱたと飛び回っている。

私は、小さく溜め息をこぼした。私も彼のそばに行けたら。なんでもないふうに笑いあえたら、どんなに幸せだろう。
くるりと目線を空に戻し、再び吐息を漏らす。

ああ、私も彼のまわりを飛びまわりたい。