「なぁ、なぁ。月影〜。数学の課題見してくんね?昨日、やるの忘れてさ〜。」

女子だけの楽しい空間に入って来たのは、数学の真っ白なノートを手にした愛希だった。

「はぁ!?そんなの、ちゃんと自分でやれし!何でもかんでも、月影に頼るんじゃないの!あんた、月影のこと好きなの!?」

キッと目を光らせ、きーちゃんは言い切った。愛希は、珍しくたじろいでいる。

てか、愛希はちゃんと好きな人がいるらしいですよ。とにかく優しくて、笑顔がかわい〜い子だそうです。メロメロなんですって。平和でいいですね〜。笑笑

「だって、月影のノート、分かりやすいし。字もきれいだし、頭もいいじゃん?」

「褒めてごまかすなっ!!」

ふたりの漫才のようなやり取りを見ていると、なんだかこちらまで幸せな気分になってしまう。もしかして、愛希の好きな子って、きーちゃんかな?

「私は全然いいよ〜。でも、ちゃんと返してね。」

「お〜、サンキュー月影!ありがたく借りるわー。明日までには返すな〜。」

愛希は、それだけ言うと、きびすを返して、立ち去ってしまった。都合のいい奴だ。きーちゃんが、ぷんぷん怒っている。

「ほんとだらしのない奴だね〜。課題もやんないなんてさぁ。月影はえらいね。あんな奴に貸してあげるなんて。優しいじゃん!」

「いや、そんなこと・・・、・・・きーちゃん??」

彼女の様子がさっきから違うことに気付いていた。寂しい本音を隠して、わざと明るくふるまっているような感じだ。
・・・もしかして・・・。

「ん?何?なんもないよー。いやぁ、月影は本当に優しいね〜。どうでもいい奴に課題を見せるなんて。ほんと、だから、愛希は・・・。」

「・・・きー、ちゃん・・・?」