『それよりさ〜』
『愛希って好きな人いるん?』

何とか話をごまかしたくて、質問返しをする。
でも男子って、こういう時、好きな人がいても、いないって言ったりするんだよなぁと思っていたら、予想外の返事が来た。

『いるよ』

なんだ、なら話は早いじゃん、と思う。

『誰、誰??同じクラスの子??』

これで、さっきの話は忘れたかなと思い、立場逆転に成功する。

『まーね』
『とにかく優しくて、笑顔がかわいいの』
『俺が絶対に幸せしてやりたいんだけどさ』
『そいつ、他に好きな奴がいるみたいなんだよな』

ぷは、と思わず笑ってしまう。
何それ?めっちゃ笑える。愛希も、片想いなんてするんだ。それも、かなり切ない恋。

『へ〜そうなんだ〜笑笑』
『愛希も片想いしてるんだね』

『なんで笑ってんのさ?』
『おれはマジで言ってんのに』
『てか、話変えるなよ〜 つきかの好きな奴の名前、まだ聞いてないぞ〜』

ぎくりとした。バレていたらしい。
でも、愛希に好きな人の名前なんて絶対に教えたくない。言えば、人気者の愛希のことだから、すぐにクラスに知れ渡ってしまうにちがいない。

そんなことになったら、いつの日か結弦君本人の耳に入り、そして有無を言わせず振られる、なんてことになるかもしれない。

そんなのは嫌だ。

どうせふられるなら、きちんと自分の口で伝えたい。そして、それはまだ先の話だ。