アゲハが人だったら、きっと今、ぴんと指を立てていただろう。面白いことがあって、それを早く言いたくて仕方がない子どもみたいに、得意げに話し出す。

「まずは、目を合わせること!!」

「目・・・?」

「そう!いわゆるアイコンタクトってやつのこと。中学生男子なんて、単純だからさ、特定の女の子とよく目が合ったら、意識しちゃうもんだよ。」

うーん?そうかなあ・・・?

「なんか、目が合ってすぐにそらすと好き、ってよく言うじゃない。
あれは、当たってると思うなぁ。確かに、好きな人と目が合ったら、すぐにそらしちゃうよね。あたしはそらしちゃうけど、月影はどう?」

「・・・そらす。」

「おー、やっぱり〜!?じゃあ、彼と目が合ったとき、彼がどんな反応するか、見てみたくない??」

そりゃあ、見たい。見たいに決まってる。でもなんだか、重要なことを忘れている気が・・。

「・・・あのさ、アゲハ、人の心が読めるんだよね?だったら、もったいぶらないで、どうすれば結弦君が振り向いてくれるか、教えてよ。」

そう言うと、アゲハは笑った。ふは、何言ってんの、という感じで。

「そんなことしたら、つまんないでしょ?
・・・あのね〜、恋なんてそうそう大きなことは起こらないものなのよ。自分から動いたりしないと、何も変化は起きないの。アイコンタクトは、月影みたいな、恋に対して奥手な女の子にぴったりな恋の進め方だと思うよ。
だからほら、そんなしょげた顔しないで。頑張ってみなよ。どんな恋だって、アタックしだいでいくらでも結果が変わるんだからね。」

「・・・それも、アゲハの昔話?」

「こらっ!昔じゃない!あたしはまだ14歳ですっ!」

必死に言い返すアゲハを交わしながら、私は、明日結弦君と目を合わせた瞬間を想像していた。