アゲハの言い方が、もう両想いオーラが出すぎていて、なんだか腹が立ってきた。

「・・・それで?」

「何怒ってるん、月影〜?
・・・あのね〜、好きな人に好きな人がいるって知ったときの衝撃分かる?・・・まぁ、続き話すよ。
そんでね、そんなわけないでしょって言い返したのね。そしたら、じゃあ好きな奴の名前教えて、って言うの。言えるわけないし、しかもなんか立場逆転してるし、もうわけわかんなくなってさ。
今は言えない、ちゃんと言いたいから、なんて言っちゃってた。そしたら、彼、こう言ったの。頑張れ、応援するよ。両想いになれたら、俺とデートしような、って。
あたし、物凄く浮かれっちゃってさ。ひょっとして、彼もあたしのことが好きだったんじゃないかって思っちゃってね。
・・・そんなことあるはずないのにね。実は彼には、違うクラスに彼女がいてね。あたしが両想いになったら、その人とダブルデートしようって意味だったんだよ。
ばかだよねー、あたしも。好きな人がいるって言われた時点で、諦めるべきだったのに。浮かれた分、凄くへこんだよ。
失恋ほどつらいことは、この世にないよね。失恋って、本気で好きであるほど、物凄くつらいことだってことを知ったよ。」

先ほどとは打って変わって寂しい表情を作る彼女。そんなふうに言われたら、さっきの小さな怒りが一瞬にして消えた。

「まぁ、初恋は叶わないって言うしね。叶わないからこそ、いい思い出になるってさ。アゲハも、だから今でも覚えてるんでしょ?」

「・・・いや、これ、つい最近の話だから!あたしの前世は人だったって、言ったよね?・・え、もしかしてあたし、老けてみえる?」

「・・見た目じゃあんまり分かんないけど、いまの話し振りからして、かなり昔を懐かしんでるように聞こえたよ?アゲハ、今何歳?」

すると彼女は、きりっとした口ぶりで答えた。

「まだピチピチの14歳ですー!心はー!」

・・・心は?てことは、それよりは年上ってことだよね。

「真面目に答えてよぉ〜。」

「真面目だよ。・・・人はね、生まれて3〜4年くらいなら、前世の記憶があるんだって。あたしはあるから、ちょうちょとしては3〜4歳なんだろうけど。でも、ちょうちょの3〜4歳は人の14歳だから!」

本気で言っているのか冗談なのか分からず、私は苦笑した。

「あーそうなの。14歳なのね。じゃあ、私と同い年だね〜。」

「うん、そう。だから、片想いのつらさも、失恋の苦しみも、そこらへんにいるちょうちょよりは分かるつもりよ。だから月影、あんたの片想いを成就させてやりたいのよ〜。アドバイス言うけど、ちゃんとやるって約束出来る?」

言うことの聞かない幼稚園児に、言い聞かせる保育士のようだった。私は、よく分からないまま、うなづく。

「よし。じゃあ今から言うからね。明日から実行するんだよ!」