「それで、その人とはどうなったの?」

「うーん・・・。一度だけね、彼と1対1で話すチャンスが来たことがあるのよ。なんと、席替えで席が隣になっちゃって。」

「えーー!!チャンスじゃん!」

思わず、大きな声が出る。心底羨ましい。私も結弦君の隣の席に座りたい。
私の反応を見て、アゲハはふふっと笑った。

「そう。私も、その日は浮かれたんだけどね。でもやっぱり、人気者の彼のそばには常に誰かいてさ。話すタイミングがなくて。まあ、あっても話せたか分かんないけど。
あたし、人見知り激しい方だったからさー。彼の隣がこんな地味な奴かよ、気に食わねー、みたいな視線を感じただけで気後れしちゃってたのよ。
それで、居心地が悪くて、席をはずすのね。で、戻ってきた頃には、私の席に女の子が座っててさ。楽しそうに彼と会話を弾ませてるのよ。もう悔しくて悔しくて、席には戻れないし、みじめな気持ちにさせられるしで、ほんとにつらかったよ。
あたしと彼はつりあわないんだなぁって再確認して、冷ややかな女の子たちの視線を浴びてたよ。」

そうか・・・隣の席になれたからと言って、そう簡単に好きな人に近づけるわけないんだ。

さっき、単純に喜んでしまった自分が、急に恥ずかしくなる。