帰り道で、足元にあった石ころを蹴っていると、頭上から声がした。

「ちょっと月影〜!あんた、何してんのよ!」
顔を上げるとやっぱりいたのはアゲハだった。

「何が?」

「さっきの子!あんたと凄く仲いいじゃない。あんたのこと好きなんじゃないの?あんなにいい男がいるのに、何でろくに話せもしない男を好きになってんのよ。」

ぐさりと胸にきた。
そんなこと言われても、仕方がない。愛希が私を好きだというのはアゲハの勘違いだとしても、そりゃあ私だって、私のことを好きになってくれる人を好きになれたら、どんなにいいだろうと思う。
でも、それが出来たら、世の恋する乙女や、健気な片想いをする男の子たちが、悩むことはないのだ。

人は、恋する相手を選べない。

「そんなこと言われても・・・。てか、愛希はただの友達だけど。」

「なぁに言ってんのよ。見るからにラブラブだったよ?」

「それは、意識してないからだよ・・・。」

「えっ?」

恋愛対象外の男子となら、緊張しないで話せる。去年も同じクラスの愛希なら、なおさらだ。愛希は、男子にしても女子にしても、対等に明るくしゃべっている。人見知りをあまりしない方なのだろう。

そんなふたりが並んでしゃべっていたら、ラブラブだなんて。そんなのは酷すぎる。

だって私は、愛希とではなく、違う彼と仲良くしたいのだ。そう・・・、結弦君と。

「意識?なら、その結弦君とも、意識しないで話せばいいんじゃない?」

「そんな簡単にいわないでよぅ。そんなことが出来てたら、こんなに悩んでないよ・・・。」

アゲハは、あーね、と言わんばかりにふわふわと羽をはためかせる。

「つらいのねぇ、片想いって。」

アゲハが、今更なことをそっと呟いた。