「おねえちゃ〜〜ん・・・」

休み時間、席について次の授業の準備をしていると、後ろから呼ばれた。
妹のリリカだった。
リリカは同じ高校に通う一年生、私の妹。

「お財布忘れちゃって・・・後で返すから、お金かして〜!」

リリカは忘れ物が多くて、たまに私にこうして物をかりにくる。
慌ててお財布から2千円取り出してリリカに渡す。

「おねえちゃん、ありがとう〜!」

本当に嬉しそうに笑うリリカ。
いいから。
いいからはやく、どこかに行って・・・!
そうしないと・・・・・・


「あっ、足留リリカだ!」
「かわいーい!」



クラスメイトが次々にリリカを褒めるのが聞こえる。
まただ・・・とウンザリする。



「ほそーい!顔ちっちゃーい!」




そう。
妹のリリカはすごく可愛い。
色白で細くて、目がぱっちりしていて可愛い。
手足も長くて顔も小さい。
肌もすべすべですごく女の子っぽい。
どうして私と姉妹なんだろうって、自分でも不思議になる位に・・・。



「ほんと、リリカちゃんあんなに可愛いのに・・・姉は・・・プッ」


「どうやったらあんなに違って産まれて来るんだよ」




そんなの私が聞きたい。
どうして姉妹でこんなに違うのかって。
こんなに不公平なんだろうって。
リリカの事は大好き。
小さい頃から仲良しの、たった1人の妹。
醜い私の事、馬鹿にした事も一度もない。リリカは優しい。
でも、リリカが教室に来ると、いつもこう。
惨めで、悲しくて、押し潰されそうになる。



「リリカ、もうーー・・・」



もう戻りなよ、と言おうとすると、リリカの後ろに・・・。



「きゃーー!黄金川先輩!」



更にクラスメイトが騒ぐ。
黄金川 武(こがねがわ たけし)。
三年生の先輩で、リリカの彼氏。
バスケ部に入っていて、学校中の女子に人気がある。


背が高くて、がっしりしているのに、アイドルみたいに整った顔。
柔らかそうな髪を少し茶色く染めている。
本当に、すごく格好良い。
女の子なら誰だって憧れてしまいそうなイケメン。
リリカと並んで立っていると本当に絵になる。
入学したばかりのリリカに黄金川先輩は一目惚れしたそうで、黄金川先輩の方から告白したそうだ。