耐え切れなくて零れた涙は冷たい親指にすくわれて、「お前が好きなのは龍じゃなかったのかよ」って皮肉っぽく囁かれた。
いつの間にか隣に来てくれたこの人。意地悪なこんな姿が、好きなの……。

「龍君の事は友達として好きだけど、抱きしめて欲しいとか、キスしたいって思うのは隼人さんだけで……」
「ぷっ、マイクまだ入ってるけど」
「えっ?」

私……トマトみたいに真っ赤になってるに違いない。冬だと忘れるぐらいに顔が熱いのに、ステージ前は冷やかしの嵐だ。
「もう、降りる」
恥ずかしさのあまり踵を返してステージを降りようとしたら、力強い腕で腰を抱き寄せられた。彼の右手は顎の下へ。

隼人さん、顔が近いよ……。
「返事まだしてないだろ」
「んっ」
重なった唇だけで頭は真っ白になるのに、柔らかい舌が唇をこじ開けて……。
永遠のような時間重なっていた唇が離されて、意地悪く笑った隼人さんの顔が視界を覆った。

「……隼人さんの、馬鹿っ」
押し退けて右手を振り上げたら、マイクを持った司会の男性が割って入った。

「はいはい、無事上手くいったようで何よりですね。本日最後の告白は大成功! ということで皆さんの告白、振り返ってみましょうー。モニターをどうぞ」

司会の男性に隼人さんと二人テントに押し込まれる。
「何なんだよ。隼人! これ演出? 言っといてくれなきゃ困るだろ」
「悪ぃなミノル。でもそれはこいつに言ってくれよ。演出とかじゃねーし」

「あの、ごめんなさい」
「え? そうなの? そっか。じゃあ仕方ないか……」
口ごもるミノルさん。
ふくれっ面しながらもわたしに向かって「あの、良かったね」って苦笑いしてくれる。
やっぱり悪い人じゃない。

「龍ちゃん。だーいすき」の声が会場から聞こえて、私はテントから顔を出してみた。画面上では和香が龍君に告白してる。横には照れて顔を真っ赤にした龍君が映っていた。

「龍と和香ちゃんにはサクラ頼んだんだ。一番に告白してくれる子がいたら、一般の子も続きやすいと思って」
肩を抱き寄せて隼人さんが画面を指さす。

クリスマスの時も、さっきも隼人さんは私が龍君の事好きだって言ってた。
そんなそぶり見せたつもりもなかったんだけど、実はバレバレだったんだ。
って言っても、もう今は龍君の事友達だとしか思ってないからね。