ガラガラッ
「…あ、お取り込み中?」
え…?
突然開いたドアからヒョコっと顔を出した人物にあたしの目は釘付け。
身体は押し倒されたままなのに、さっきまでの恐怖はどこかに吹っ飛んだ。
その代わり、胸の奥がキュンッと痛み出す。
「チッ…」
山本くんは舌打ちをして教室から出て行った。
なんか…
なんかなんかなんか!!!
この人、王子様みたいじゃない!?!?
あたしのピンチに颯爽と現れて救ってくれるなんて、あたしの運命の王子様に違いないよね!?
「げ!姫じゃん」
王子様の隣にいた女の子があたしを見るなり口を開く。
ん?
あたしのこと知ってるのかな…?
「あ、 あの、助けてくれてありがとう…っ!」
やだ、声震えちゃった。
こういう時に限って得意の甘ったるい声が出ない。
「別に助けたつもりないけど……君がビッチな璃莉葉ちゃん?」
ビッチ…?
「えっと…男の子にはよくぎゅってしてもらってるけど…?」
「ふーん…じゃあ今度俺とも遊んでくれない?」
「ちょ、何言ってんの利夏!?」
???
よくわかんないけど…
王子様と仲良くなれるチャンス!?
「いいよ!あ、でも…」
「何?」
「ぎゅー、してくれる…?」
「ちょっと!いくら姫だからって…!」
「いいよ、おいで?」
「え、ねぇ利夏!?」
「やったぁ♪」
あたしは腕を広げた王子様の胸に飛び込んだ。
優しく包み込んでくれる腕の中は香水のいい匂いがして、フワフワいい気持ち。
ほわわ…
今までの男の子たちとは違う…
心臓がドキドキしてて落ち着かない…
でもそれがどこかくすぐったくて心地いいような…
「…ねぇ、いい加減もうよくない?早く利夏から離れてよ!」
「……!え、彼女さん…?」
「ははっ、彼女じゃないよ」
「利夏は彼女つくらない主義なの!」
「え、そうなの…?」
「まぁ…で、いつ空いてる?」
「あ、いつでもいいよ!」
「んー、じゃあ明日の放課後この教室で待っててよ」
「わかった…!」
「じゃあね、璃莉葉ちゃん」
そう言って王子様は教室を出て行った。
どうしようあたし王子様にぎゅーしてもらって遊ぶ約束までしちゃった…!!
鼓動は未だに早いまま。
簡単に約束なんてしちゃったけど…
あたし大丈夫かな…