お祭り会場は案の定激混み。


それでもあたしは無意識に利夏くんを探してしまう。



「なんか食いたいのある?」

「んー…あ、りんご飴食べたい!お兄ちゃん買ってきて♡」

「…仕方ねぇな」



相変わらずお兄ちゃんはあたしに激甘だなぁ。



「お兄ちゃん、あたしチョコバナナも食べたい♡」


「お兄ちゃん、わたあめも欲しいなぁ」



あたしのわがままを全て聞いてくれるお兄ちゃん。



「お兄ちゃん、射的であのぬいぐるみ取って?」

「あれ?あんなんいるかぁ〜?」



そう言いながらも射的屋さんのおじさんにお金を払っているお兄ちゃん。



ヒュー…

ドーーーーーーーーーンッ…



あ、花火始まった!


夜空に1発目の花火が打ち上がると周りの人々が一斉に観覧席の方向へと動き出す。



「わっ、あ、ちょっ…お、お兄ちゃーん!」



人の波に飲み込まれてしまったあたしはお兄ちゃんに助けを求めるも射的に夢中なお兄ちゃんは全く気付いていない。

慣れない浴衣のせいもあってかどんどん離れていってしまい、とうとうお兄ちゃんの姿を見失ってしまった。

進み続ける人の波に流され続けるあたし。