[利夏side]


「王子〜帰ろー♪」



放課後、きつい香水の匂いを纏った女が腕を絡ませてくる。


この匂いきつすぎだろ…

鼻ヘンになりそ…



「利夏くんッ!」



教室を出て歩いていると後ろからギュッと腕を掴まれる。


これは流石に無視できないな…


振り返らなくてもわかる、嫌でも俺の耳に届く声。



「なに?」

「やっと見てくれた…」



振り返ると眉を八の字に下げ、今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げるお姫様。



「利夏くん、今日の朝…」

「電車1本遅らせた」

「なんで…?あたし、なんかした?」

「別に…」

「嘘、だって今日ヘンだよ…」

「…普通だけど」

「じゃあなんで無視するの?」



とうとう璃莉葉ちゃんの目から涙が零れた。



「はぁ…璃莉葉ちゃんさ、俺の特別になりたいんじゃないの?」

「なりたいよ!」

「だったら!!」

「ッ!!」



やば…

声あげすぎた…

てかなんで俺こんなキレてんだよ…



「だったら、なんであんなことしてんの…?」

「え…?」

「昨日の放課後、空き教室にいたよね?」

「あ、あれは…」



口籠る璃莉葉ちゃんにイライラする。



「やっぱ誰でもいいんじゃん?」

「え…?」

「一生他の男と抱き合っとけよクソビッチ」



俺はそう吐き捨て、璃莉葉ちゃんを残してその場を後にした。



「王子があんなキレてるの初めて見た…」

「…今日家行っていい?」

「もちろん♡」



この香水の匂いにも慣れてきたな…

俺の鼻ヘンになったのかな…