[利夏side]


「王子〜!今日は私とだよ♪帰ろ!」



腕を絡ませて密着して歩くもんだから歩きづらいったらありゃしない。



ガタッ…



「…?」



空き教室の前を通った時、中から音がした。



「ぇ…」



偶然にもドアの僅かな隙間から中の様子が見えてしまった。



「王子?どしたの?」



隣の女の声にハッとして一瞬止まった足を動かした。



「なんでもない」



動揺が顔に、声に出ないようにあくまで冷静を装った。



「今日ね、彼氏からも一緒に帰ろって言われてたんだ〜」

「そうなんだ」



いや、てか、俺動揺してるのか?



「でもぉ、王子の方優先させちゃった!」

「そっか」



空き教室の中では見覚えのあるツインテと男が抱き合っている最中だった。