「ちょっとあんた、何してんの」
「ッ!」
「…利夏くん……」
利夏くんの声と同時に離れた手。
見ると利夏くんがおじさんの手を掴んでいる。
「利夏くん…利夏くん……!」
利夏くんの姿を見て安心したのか張り詰めていたものが一気に緩んであたしは利夏くんに抱きついてしまった。
「ちょ、璃莉葉ちゃん、今は…!」
「利夏く、ぅ…っ」
溜まっていた涙が溢れ、次から次へとこぼれ出す。
「…離せっ!」
「あっ、おい待てよ!!!」
「いや、行かないで!!」
利夏くんの腕を振り払ったおじさんを追いかけようとする利夏くんに更に強く抱きつく。
おじさんはちょうどホームに着いて開いたドアから降りていってしまった。
「お願い…そばにいて…」
「璃莉葉ちゃん…」
利夏くんは周りの人から庇うようにあたしの前に立ち、なだめるように背中をさすってくれた。
「次で降りよっか、遅刻になるけどいいよね?」
あたしはコクコクと頷く。
降りる予定のなかった駅に利夏くんと2人で降りる。
「ここ座ってちょっと待ってられる?」
「うん…」
だいぶ落ち着いたあたしをホームの椅子に座らせてからどこかへ行ってしまった利夏くん。
あーあ…
電車に乗る前まではハイテンションだったのに。
今じゃ散々泣きじゃくったせいでメイクは落ち、目は腫れ、鼻は赤くなり、今朝あれだけ時間をかけたのが全て台無し。
利夏くんにこんな姿見られたくなかったな…
王子攻略初日からこんなんじゃお先真っ暗だよ…