「あ、家ここ…」
駅からあたしの家まで、こんなに短かったかな…
駅からの道中、ずっと無言だったけど隣を歩けただけで嬉しい。
「あぁ、そう…じゃあね」
王子は素っ気なく踵を返し元来た道をスタスタと歩いて行く。
降りる駅も違うのにわざわざ降りてあたしの家まで送ってくれて…
これから王子はさっき歩いたばかりの道をまた1人で歩いて、電車に乗って自分の家に帰る…
考えただけで面倒くさいことを王子は好きでもない子に当たり前にしてくれるんだよね。
なんでだろう…
今とてつもなく王子にぎゅってしたい…
思い立った瞬間、あたしの足は自然に動いていた。
「利夏くんッ…!」