“ザバーン!”

「ちょっと波強いな。注意放送!」
「は、はい」

“ファーーーン!”

メガホンの嫌な音が響く。
耳を塞いでから、深呼吸。
磯の香りが身体を包む。

「注意放送、注意放送……」
「はーい、そこ、浜に近付いて!」
「何だよ~、ちぇっ」

舌打ち。
波の音。
メガホンの嫌なノイズ。

恐ろしいまでに耳に残る音たち。
そして、唯一消えるのは
優しかった、貴方の声だけ。