「祐太?」

しんとする海の家。
お客さんもいなくて店員が座るだけ?

「どうした?」
「え、いや、何でもないです……」

俯いて、眼だけで探す。
白い砂浜に見えるのはゴミと海草。
そんな海に、祐太がいるはずもないのに。

『ねえ、名前なんて言うの?』

そう聞いてきた男の顔が浮かぶ。
何故か感じる懐かしさ。

あの人には、会ってない。
こういう仕事をしていても会えない。

求めているわけじゃないけど
穴を埋めてくれるんじゃないかという期待。
そんなこと、思っちゃいけないのに。

「あ、そういえばこれ、落し物」

店員の人に渡される携帯電話。
条件反射で受け取る自分。
落し物を探しに来たわけじゃないのに。

ここでの仕事はこればっかりだ。

「……失礼します」

ここにいても続かない。
祐太もいないのに、いる必要もない。
……じゃあ、あれは夢?