パパを恋しい気持ちは苦しいくらいあるのだと。

記憶はなくても、私がパパもママも頑張ってこなしてるつもりだったけど、無理があったのかもしれない。

『七くん、このお兄ちゃんはパパのお友達じゃないわ。パパのお友達に会いたいなら、葉ちゃんに頼んだらいいわ。葉ちゃんのお兄ちゃんの壱紗(かずさ)くんが仲良しだったのよ。』

涙を必死に堪えて、七くんの目線で話す。

「わかった!葉ちゃん、壱紗くん呼んで~!」

葉ちゃんに飛びついていった七くんを、そのまま抱き上げて中に連れていってくれる。

アイス食べようか?なんていって。

気が回る子だわ。

さて、私は瀬高さんに向き直る。

「紅さん…旦那さんは…。」

『事故で3年前に亡くなりました。あの子にパパの記憶はありません。パパの分まで精一杯頑張ってるつもりですが、あの子もパパが恋しいんですよね…。私じゃダメみたいです。』

「紅さんっ!」

瀬高さんの言葉を遮り、

『今日はお帰りください。瀬高さんが何者かなんて、全く知りませんが、これからも興味はありません。ただの瀬高さんと服部さんとして、良ければお越し下さい。』

動揺している瀬高さん。

目線を瀬高さんの孫には一切向けず、どんな顔しているかなんて見てもいない。

興味がないからどんなことを言われてもいいけれど、七くんの前ではやめてほしかった。

私は悔しくて、涙が溢れそうだったから、思わず背を向けた。