「まぁ、あんだけ怒れるなら大丈夫。まだパワー残ってるよ」



そう言ってソファから立ち上がったそいつは、救急箱から絆創膏を取り出していた。




「え、なんで、そんなこと」

「人が本当にダメになる時は、怒るパワーも泣くパワーも何もねんだよ。だから、お前はまだ泣くパワーと怒るパワーが残ってるから大丈夫、また立ち上がれる」



そう言って、膝に絆創膏を貼ったそいつは、私にVサインを送った。



なに、こいつ。

超最低男だと思ってたら超いい奴じゃん。



ぼーっと彼の顔を見つめていると、ぐんぐんと近付いてきて、私の耳元に口を寄せる。



「好きになっちゃった?」



は?!やっぱり取り消し!今のナシ!


「なわけないでしょ?!ばか!変態!」



そう言うと、また楽しそうに笑った彼は、じゃーなーと手を振って保健室から出て行った。